「社内の情報セキュリティ研修を内製(自社で作成・実施)すれば、費用を安く抑えられるのではないか」
「外注すると数十万円かかるから、自社でスライドを作って実施した方が合理的だ」
このように考える総務・人事・情報システム部門の担当者の方は少なくありません。
確かに、外部の研修会社に支払う直接的な費用だけを見れば、内製化の方がコストを抑えられるように見えます。
しかし、教材の作成や講師の準備、受講管理にかかる「目に見えない人件費(社内コスト)」を合算すると、実は外注した方が安上がりになるケースも存在します。
本記事では、情報セキュリティ研修を内製化した場合のリアルなコスト計算方法を解説し、外注とどちらが安くなるのかを徹底比較します。
1. 【コスト計算】セキュリティ研修を内製化する際にかかる4つの隠れた費用
内製化における最大の落とし穴は、担当者の「人件費(タイムコスト)」が計算から抜け落ちてしまう点です。
自社でゼロから研修を行う場合、主に以下の4つのコストが発生します。
① 教材・スライドの作成コスト(初期コスト)
セキュリティの専門知識がない状態から、全社員が理解できる分かりやすい教材(PowerPoint等)をゼロから作成する作業です。
- 想定される作業:最新の脅威情報のインプット、構成案の作成、スライドデザイン、クイズや理解度テストの作成
- 人件費の目安:担当者1名が通常業務の合間に計20時間を費やした場合、時給2,500円として約50,000円のコスト。
② 最新の脅威に合わせた「教材のアップデート」コスト(運用コスト)
セキュリティ研修は一度作れば終わりではありません。サイバー攻撃の手口は日々変化するため、毎年(あるいは半年に一度)内容を更新する必要があります。
- 想定される作業:フィッシング詐欺や生成AIリスクなど、最新トレンドの追記・修正
- 人件費の目安:毎年約5〜10時間のメンテナンスが必要となり、年間約12,500円〜25,000円のコスト。
③ 研修の実施・講義コスト(当日のコスト)
対面やオンライン(Zoom等)でリアルタイムに講義を行う場合、講師を務める担当者の時間だけでなく、受講する社員全員の「時間(人件費)」が同時に消費されます。
- 想定される作業:講師の登壇時間、受講者の拘束時間
- 人件費の目安:社員100名が1時間の研修を受講する場合(受講者平均時給2,000円)、1回につき約200,000円の機会損失コスト(人件費)が発生します。
④ 受講管理・効果測定のコスト(アフターコスト)
研修を実施した後のフォローアップにも多くのリソースが割かれます。
- 想定される作業:未受講者へのリマインド、テストの採点・集計、不合格者への再テスト案内、上司へ提出する実施報告書の作成
- 人件費の目安:名簿の管理や集計作業に計5時間を費やした場合、約12,500円のコスト。
2. 内製と外注(3つの形式)のコスト比較表
自社で内製する場合と、外部の研修サービス(3つの形式)を利用する場合のコスト構造を比較表にまとめました。
| 研修形式 | 初期コスト(教材準備) | 運用コスト(毎年の更新) | 実施コスト(受講時) | トータル費用の傾向 |
| 完全内製(自社作成) | 担当者の人件費(高) | 毎年の修正人件費(中) | 講義・受講人件費(高) | 参加人数が少ないほど割高 |
| 動画教材(買い切り型) | 教材の購入費(中) | 原則なし(アップデート付属の場合) | 案内のみ・受講人件費(中) | 人数が多いほど1人あたりは最安 |
| eラーニング(月額課金) | 初期設定費(低〜中) | 毎年の月額ID費用(高) | 受講人件費(中) | 長期運用・人数増でコスト増 |
| 講師派遣(対面・オンライン) | 登壇・カスタマイズ費(高) | 開催ごとの費用(高) | 講義・受講人件費(高) | 一時的な費用は最大 |
3. 「内製」と「外注」どちらを選ぶべき?判断の基準
予算や企業の規模によって、どちらがコストパフォーマンスに優れているかは異なります。以下の基準を参考に自社の状況を判断してみてください。
内製化が向いているケース
- 受講対象者が10〜20名以下の少人数である
受講者が極めて少ない場合、外部のサービスを契約するよりも、担当者が社内会議の延長でサクッと説明した方がトータルの出費を抑えられます。 - 自社独自の厳格な運用ルールを徹底させたい
一般的なセキュリティ知識ではなく、「自社のこのシステムのこの操作手順」といった、極めてニッチな自社専用マニュアルを教育したい場合は内製が適しています。
外注(特に動画や効率的な教材)が向いているケース
- 受講対象者が50名以上の規模である
人数が増えるほど、受講管理や未受講者への催促、テストの採点といった「事務作業コスト」が倍増します。これらをシステムやパッケージで効率化できる外注の方が、担当者の人件費を大幅に削減できます。 - 教材をゼロから作るリソースや専門知識がない
日常業務で手一杯の情報システム担当者や総務担当者が、業務時間を割いてまで慣れない教材作りに苦戦するのは、企業全体として大きなタイムロス(機会損失)になります。 - 内定者や中途採用者へ小まめに実施したい
「新入社員が入るたびに毎回同じ講義をする」のは非効率です。いつでも見られる外部の動画教材などを活用する方が、中長期的なコストを最も低く抑えられます。
よくある質問(FAQ)
Q. 内製化のために、無料の公的機関(IPAなど)の資料を使うのはアリですか?
A. 非常に有効な手段ですが、注意も必要です。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)などが公開している無料の資料やガイドラインは信頼性が高く、内製化の強い味方になります。
ただし、スライドの枚数が非常に多かったり、専門用語がそのまま使われていたりすることがあるため、自社の社員向けに「分かりやすく噛み砕いて構成し直す」ための社内人件費はやはり発生します。
Q. 「買い切り型の動画教材」と「月額課金のeラーニング」はどちらが安くなりますか?
A. 運用期間と人数によりますが、一般的には買い切り型の方が長期コストを抑えられます。
月額課金型は「1名あたり月額数百円」と一見安く見えますが、社員数が多かったり、毎年継続して利用したりする場合、コストが右肩上がりに膨らみます。
買い切り型であれば、一度の購入で何年でも、何名にでも受講させられるため、トータルコストをフラットに抑えることが可能です。
まとめ
社内セキュリティ研修のコストを検討する際は、目に見える「見積もり金額」だけでなく、自社の担当者が費やす「時間(人件費)」を必ず計算に入れることが大切です。
- 担当者の負担(教材作成・アップデート・採点)
- 受講者全員の拘束時間
- 毎年継続した際にかかるトータル費用
これらを総合的に比較し、自社にとって「内製化による労力」と「外注による費用」のどちらが最も費用対効果が高いかを見極めてみてください。
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