「IDやパスワードの管理、本当に今のままで大丈夫だろうか」
「総当たりでパスワードを破る『ブルートフォース攻撃』って、具体的にどのような手口なのだろう」
企業のWebサイトや社内システム、クラウドサービスを運用する上で、避けて通れないのがログインアカウントのセキュリティ管理です。
その中でも、古くから存在し、かつ現在も非常に高い脅威であり続けているのが「ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)」です。
一見すると「単純な手口」に思えるブルートフォース攻撃ですが、コンピューターの処理能力が爆発的に向上した現代においては、驚くべきスピードと効率性で実行されています。
対策を怠れば、企業にとって致命的な情報漏えいやシステムの乗っ取りに直結しかねません。
本記事では、ブルートフォース攻撃の仕組みやなぜ成功してしまうのかという原因、実際の被害事例、そして企業が今すぐ取るべき客観的かつ実用的な防御策までをわかりやすく解説します。
1. ブルートフォース攻撃とは?(その仕組みと基本手口)
ブルートフォース攻撃(Brute Force Attack)とは、日本語で「総当たり攻撃」と呼ばれるサイバー攻撃の手口です。
仕組みは非常にシンプルで、「特定のID(ユーザー名)に対して、考えられるすべてのパスワードの組み合わせを片端から試していく」というものです。
例えば、4桁の暗証番号であれば 0000 から 9999 までの1万通りを順番に入力していけば、時間はかかっても理論上100%確実にログインを突破できます。
これがブルートフォース攻撃の基本原理です。
派生する主な「総当たり」の手口
技術の進歩に伴い、単に順番に文字を入力するだけでなく、以下のような効率的な派生手口(アタック手法)が使われるようになっています。
- リバースブルートフォース攻撃(逆総当たり攻撃)特定のIDに対して多くのパスワードを試すのではなく、「よく使われる1つのパスワード(例:
password123)」に対して、大量のユーザーIDを総当たりで試していく手口です。アカウントロック(一定回数の誤入力でアカウントを一時凍結する仕組み)を回避するために多用されます。 - 辞書攻撃(ディクショナリーアタック)ランダムな文字の組み合わせではなく、辞書に載っている単語や、よく使われるパスワードのリスト(人名、誕生日、単純な数字の羅列など)を優先的に入力していく手口です。
- パスワードスプレー攻撃「1つのアカウントに対して、時間を空けて数回だけパスワードを試す」という行為を、数千〜数万の大量のアカウントに対して広く浅く実施する手口です。これにより、機械的な連続誤入力を検知するシステムをすり抜けます。
2. なぜブルートフォース攻撃は成功してしまうのか?
「すべての組み合わせを試すなんて、時間がかかりすぎて現実的ではないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、現在のサイバー犯罪において、この攻撃が今なお成功し続けているのには明確な理由が3つあります。
理由①:マシンスペックの劇的な向上
コンピューターの処理能力(特にGPUの進化)により、パスワードの計算・入力スピードは昔に比べて桁違いに速くなっています。
人間が手入力するのではなく、攻撃者が開発した自動化ツール(ボットプログラム)を使用し、1秒間に数万〜数百万通りのパスワードを自動入力して試行するため、短いパスワードや単純なパスワードは数秒から数分で破られてしまいます。
理由②:脆弱なパスワード設定
多くのユーザーが、依然として「覚えやすい単純なパスワード」を設定しています。
123456などの単純な連番passwordやqwerty(キーボードの配列)- 社名やシステム名、個人の誕生日
これらのパスワードは、攻撃者の持つ「辞書データ」の最上位に登録されているため、総当たりを始めてすぐに突破されてしまいます。
理由③:パスワードの使い回し
あるWebサービスから漏洩したIDとパスワードのリストを使い、別の企業サイトやクラウドサービスへのログインを試みる「アカウントリスト攻撃(パスワードリスト攻撃)」も、ブルートフォース攻撃の応用として頻繁に行われます。
ユーザーが複数のサービスで同じパスワードを使い回している場合、一箇所が破られただけで、社内システムまで連鎖的に突破されてしまいます。
3. ブルートフォース攻撃による企業の被害事例
ブルートフォース攻撃によってログインを突破された場合、企業には深刻な被害が発生します。
事例①:ランサムウェアの侵入経路に(VPN機器の突破)
近年多発しているランサムウェア被害の多くが、テレワーク環境などに構築された「VPN(仮想専用線)機器」のログイン突破から始まっています。
脆弱なパスワードを設定していた管理者アカウントがブルートフォース攻撃によって乗っ取られ、社内ネットワークに侵入された結果、基幹システム全体のデータを暗号化され、巨額の身代金を要求される事件が客観的に多数報告されています。
事例②:Webサイトの改ざんと顧客情報の流出
自社のコーポレートサイトやECサイトの管理画面(WordPressなど)が総当たり攻撃を受け、管理者権限を奪われる被害です。
サイトのソースコードを書き換えられて「偽の決済画面」を埋め込まれたり、登録されている顧客の個人情報やクレジットカード情報がすべて外部へダウンロードされたりするリスクがあります。
4. 企業が取るべき「5つの基本的な対策」
ブルートフォース攻撃から自社のシステムやデータを守るためには、以下の5つの防御策を組み合わせる「多層防御」の考え方が極めて重要です。
1.パスワードのポリシー(複雑性)を強化する:即時実施可能。
英大文字・小文字、数字、記号を組み合わせた「12文字以上」のパスワード設定を社内で義務付けます。これにより、総当たりに必要な計算量が天文学的な数字に跳ね上がり、事実上突破が不可能になります。
2.多要素認証(MFA)を導入する:最も効果的。
IDとパスワードによる認証に加え、スマートフォンの認証アプリやSMSへ送信される「ワンタイムパスワード」、あるいは「指紋・顔認証」を必須にします。これにより、万が一パスワードが破られても、本人以外のログインを防ぐことができます。
3.アカウントロック機能を有効化する:設定の確認。
一定回数(例: 5回)連続でログインに失敗した場合、そのアカウントを数十分間ロックする、あるいはIPアドレスからのアクセスを制限する機能を設定します。総当たりアタックの試行スピードを物理的に鈍らせる有効な手段です。
4.管理画面へのアクセス元をIP制限する:アクセス制限。
社内システムの管理画面や、WebサイトのCMS管理画面へのアクセスを「社内オフィスのIPアドレス」や「特定のVPN経由」のみに限定します。世界中の不特定多数のボットからのアタック自体を遮断できます。
5.WAF(Webアプリケーションファイアウォール)を導入する:システムの強化。
短時間における不自然な大量アクセスや、ボット特有のログイン要求挙動をリアルタイムで検知し、自動的にブロックするセキュリティ製品(WAFなど)の導入が効果的です。
形骸化を防ぐ運用のポイント:
どれほど強固なセキュリティシステムを構築しても、社内の従業員がパスワードを付箋に書いてPCに貼っていたり、個人用の脆弱なパスワードを使い回したりしていては意味がありません。企業のガバナンスとして「セキュリティルールを全社に定着させること」が対策の土台となります。
まとめ:セキュリティの「基本の鍵」を頑丈にしよう
ブルートフォース攻撃は非常にシンプルだからこそ、対策を少しでもサボった隙を確実に突いてくる厄介な攻撃です。
- パスワードは長く、複雑に、使い回さない。
- 多要素認証(MFA)やアカウントロックなどの技術的対策をデフォルトにする。
- 有事に備えて、被害を検知・対処できる体制(CSIRTなど)を整えておく。
ログイン認証という「企業の最初の砦」を客観的に見直し、サイバー脅威から自社の情報資産と信用を守り抜きましょう。
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