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CSIRTとPSIRTの違いとは?役割や保護対象、組織内での連携をわかりやすく比較

セキュリティガイド

「セキュリティ対策の組織について調べていたら、CSIRTに加えて『PSIRT』という言葉が出てきた。何が違うのだろう?」

「うちの会社はIoT機器やソフトウェア、クラウドサービスを開発・提供しているが、両方とも構築する必要があるのだろうか」

情報セキュリティの重要性が叫ばれる昨今、社内のインシデント(事故)対応チームである「CSIRT(シーサート)」の存在感は高まっています。

その一方で、特にメーカーやIT製品・サービスを自社開発する企業において急速に注目を集めているのが「PSIRT(ピーサート)」です。

名前は一字違いで非常によく似ていますが、その保護対象や活動目的、関わる業務領域は全く異なります

もしこれらを混同したまま組織を設計してしまうと、セキュリティ上の役割に重大な「隙間」が生まれかねません。

本記事では、CSIRTとPSIRTの決定的な違い、それぞれの具体的な役割と活動内容、そして製品・サービス開発企業において両者がどのように連携すべきかについて、客観的な視点からわかりやすく解説します。

1. CSIRTとPSIRTの決定的な違い(クイック比較)

まずは、CSIRTとPSIRTの全体像を把握するために、それぞれの定義と違いを比較表で整理します。

比較項目CSIRT(シーサート)PSIRT(ピーサート)
正式名称Computer Security Incident Response TeamProduct Security Incident Response Team
主な保護対象自社の社内IT環境(PC、社内ネットワーク、基幹システム、社内データ等)自社が製造・開発して提供する「製品・サービス」(IoT機器、アプリ、SaaS等)
主たる目的社内の業務継続性を守り、情報漏えいや不正アクセスの被害を最小限に抑える自社製品を利用する「顧客」の安全を守り、PL法上の責任やブランド価値を維持する
主な対象者自社の従業員、社内のITシステム自社製品を購入・利用するユーザー(顧客)、外部のセキュリティ研究者
関わる主な部門情報システム部門、総務、法務、広報、経営陣開発設計部門、品質保証部門、カスタマーサポート、法務

このように、CSIRTが「内向き(社内の防衛)」の組織であるのに対し、PSIRTは「外向き(顧客に提供する製品・サービスの防衛)」の組織であるという点が最大の相違点です。

2. PSIRT(ピーサート)とは?役割と具体的な業務

PSIRT(ピーサート)は、自社が市場に送り出す「製品(Product)」や「サービス」のセキュリティに特化したインシデント対応チームです。

近年、あらゆる家電や産業機械がインターネットに繋がる「IoT化」や、クラウドを活用したサービス(SaaS)の普及に伴い、市場に出回った後の製品がサイバー攻撃の標的にされるケースが急増しています。

製品の脆弱性(セキュリティ上の弱点)が放置されると、顧客に深刻な被害を与えるだけでなく、開発企業が莫大な損害賠償や法的責任を問われることになります。

こうした事態を防ぐため、PSIRTは以下のような客観的実務を担います。

① 開発段階におけるセキュリティ支援

製品の設計・開発フェーズにおいて、セキュリティ要件の定義や、脆弱性を作り込まないためのソースコードレビュー、セキュリティテストなどを開発チームと連携して実施します。

② 製品リリース後の脆弱性ハンドリング

自社製品に新たな脆弱性が発見された際、外部のセキュリティ研究者や公的機関(IPA、JPCERT/CCなど)から届く報告の受付窓口となります。

報告内容を客観的に検証し、修正パッチやアップデートの作成を開発部門に指示します。

③ 顧客への注意喚起とサポート

脆弱性の修正情報や回避策を、製品Webサイトや製品内の通知を通じて速やかにユーザー(顧客)へアナウンスします。

3. CSIRT(シーサート)との役割・業務プロセスの違い

次に、CSIRTとPSIRTの「有事(インシデント発生時)」における具体的なアクションの違いを見てみましょう。

有事におけるCSIRTの動き(社内インフラの防衛)

自社の社内PCがマルウェアに感染した、あるいは社内サーバーに不正アクセスがあった際に動きます。

  • ネットワークから対象端末を切り離す(封じ込め)
  • 社内のログを解析して原因を追究する
  • 社内システムの復旧と、社内ルールの見直しを行う

有事におけるPSIRTの動き(自社製品・サービスの防衛)

「販売済みのスマート家電に、遠隔操作される恐れのある脆弱性が見つかった」「自社が運用・提供しているSaaSのAPIに欠陥があり、顧客データが外部から閲覧できる状態になっていた」などのトラブル時に動きます。

  • 開発チームに緊急で修正アップデートプログラムを作らせる
  • 製品を利用している何万人もの顧客に対し、アップデートの適用を呼びかける
  • 必要に応じて製品の出荷一時停止や、回収・リコール判断を主導する

このように、インシデントが起きた際の「影響範囲の広さ」や「アプローチする対象」が全く異なるため、それぞれに適合した専門的なガバナンスとワークフローが必要になります。

4. なぜ製品開発企業には「両方の組織」が必要なのか?

「うちの会社はソフトウェア開発会社だけど、CSIRTがあればPSIRTは要らないのでは?」と考える方もいるかもしれません。

しかし、結論から言えば、製品やサービスを自社開発して提供する企業には、CSIRTとPSIRTの両方が不可欠です。

なぜなら、これらは「車の両輪」の関係にあり、お互いが機能して初めて企業のガバナンスと信頼が維持できるからです。

連携が不足したことで起きる悲劇のシナリオ

例えば、自社の「開発用サーバー(社内IT環境)」がサイバー攻撃を受けたとします。

  • CSIRTの動き:社内ネットワークを遮断し、開発サーバーを調査・復旧します。
  • ここにPSIRTの視点がないと…:「開発用サーバーの中に保管されていた、リリース前の製品のソースコード(プログラムの設計図)がハッカーに盗まれていたこと」を見落とす危険性があります。

もし設計図が盗まれていれば、将来リリースされる製品にバックドア(裏口となる侵入路)を仕込まれたり、悪用されたりするリスクが生じます。

社内インフラを守るCSIRTと、製品の安全性を追究するPSIRTが強固に連携していなければ、こうした「社内から製品へ」または「製品から社内へ」のクロスボーダーな脅威に対応できません。

そのため、両組織は定期的な情報共有ミーティングを設け、お互いのインシデント発生時におけるエスカレーションルールを共通化しておくなどの連携ワークフローの構築が推奨されます。

まとめ:自社のビジネスモデルに合わせた組織デザインを

CSIRTとPSIRTは、名前は似ていても目的や役割が明確に異なる組織です。

  • CSIRTは「自社の社内IT環境や従業員」をサイバー脅威から守るためのチーム。
  • PSIRTは自社が開発・販売する「製品やサービス、そしてそれを使う顧客」を守るためのチーム。
  • ものづくり企業やITサービス事業者においては、この二つの視点が連携し合うことで初めて、盤石なセキュリティガバナンスが完成する

自社が提供しているビジネスが「誰に対して」「どのような価値(モノやサービス)」を届けているのかを客観的に見つめ直し、適合する最適なセキュリティ体制をデザインしていきましょう。

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