「社員が会社に内緒で個人のクラウドストレージを使ってデータをやり取りしているようだ」
「Microsoft 365やGoogle Workspaceを導入したが、情報漏洩の対策が十分にできているか不安」
テレワークの定着やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、企業が業務でクラウドサービス(SaaS)を利用するのは当たり前の時代となりました。
一方で、IT部門が把握しきれないクラウド利用による情報漏洩リスクが急増しています。
このようなクラウド時代のセキュリティ課題を解決するための強力なソリューションが「CASB(キャスビー)」です。
本記事では、IT・情シス担当者様向けに、CASBの基本概念やなぜ今必要なのか、主要な4つの機能、他のセキュリティ製品(SWG等)との違いまで網羅してわかりやすく解説します。
1. 3分でわかる「CASB(キャスビー)」とは?
CASBを一言でいうと?
CASB(Cloud Access Security Broker:クラウド・アクセス・セキュリティ・ブローカー)とは、「企業(ユーザー)と利用する複数のクラウドサービスの間に単一の関所(コントロールポイント)を設け、全社統一のセキュリティポリシーを適用・監視する仕組み」のことです。
2012年に米国のIT調査会社ガートナー(Gartner)社によって提唱されたセキュリティ概念であり、現在では多くのセキュリティベンダーがCASB製品を提供しています。
これまでのセキュリティ対策は「社内ネットワークを守る(境界型)」ことが中心でしたが、データが社外のクラウド上にある現代では、「クラウドへのアクセスと、クラウド上のデータを守る」というCASBの仕組みが不可欠になっています。

2. なぜ企業にCASBが必要なのか?(導入の背景)
企業がCASBを導入すべき最大の理由は、「シャドーIT」と「クラウド設定のミス」による情報漏洩を防ぐためです。
理由①:シャドーITの可視化と制御
シャドーITとは、会社の許可を得ていない私物のスマートフォンや、個人用のアカウント(個人のGoogleドライブ、Dropboxなど)を業務で勝手に利用してしまう行為です。
CASBを導入すると、社内ネットワークから「誰が・どの非公認クラウドサービスへ・どのようなデータを送信しているか」を完全に把握し、ブロックすることができます。

理由②:クラウドサービス間のセキュリティレベル統一
企業によっては「営業部はSalesforce」「全社ではMicrosoft 365」「開発部はAWS」と、複数のクラウドを使い分けています。
それぞれの管理画面でセキュリティ設定を行うと、設定漏れやミスが生じやすくなります。
CASBを導入すれば、複数の異なるクラウドサービスに対するセキュリティ設定を、一つの画面で統一して管理・適用できるようになります。
3. CASBが持つ「4つの基本機能」
ガートナー社は、CASBが備えるべき要件として以下の「4つの基本機能」を定義しています。
- ① 可視化(Visibility)
- 社内の誰が、どんなデバイスから、どのクラウドサービスにアクセスしているかを監視・記録します。これにより、前述の「シャドーIT」をあぶり出すことができます。
- ② コンプライアンス(Compliance)
- 利用しているクラウドサービスが、企業が定めるセキュリティ基準や各種法令(GDPR、PCI DSSなど)を満たしているかを評価します。危険なクラウドサービスの利用を制限することが可能です。
- ③ データセキュリティ(Data Security)
- クラウドへアップロードされるデータの中身を検査し、マイナンバーやクレジットカード番号などの機密情報が含まれている場合、アップロードのブロックやデータの自動暗号化を行います(DLP機能)。
- ④ 脅威防御(Threat Protection)
- いつもと違う場所からのログインや、大量のデータダウンロードといった「異常なふるまい」を検知してアカウントをロックダウンしたり、クラウド上にアップロードされたファイルにマルウェアが潜んでいないかをスキャンして隔離したりします。
とは?仕組みや役割、企業が導入するメリットをわかりやすく解説-320x180.png)
4. CASBと「SWG」や「SASE」との違い
CASBを検討する際、よく似た役割を持つセキュリティ用語との違いを整理しておきましょう。
- SWG(Secure Web Gateway)との違い
- SWGは「インターネット全般(Webサイトの閲覧など)」へのアクセスを監視し、危険なサイトをブロックする仕組みです。一方、CASBは「特定のクラウドサービス(SaaS/IaaS/PaaS)」の利用状況をより深く(誰がログインし、どんなファイルをアップロードしたかまで)監視・制御することに特化しています。最近は両方の機能を統合した製品も増えています。
- SASE(サシー)との違い
- SASE(Secure Access Service Edge)は、ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウド上で統合提供する「大きな枠組み(アーキテクチャ)」です。CASBは、SWGやZTNA(ゼロトラスト・ネットワークアクセス)等と並んで、SASEを構成する重要な「パーツ(機能)の一つ」という位置づけになります。
5. 企業がCASBを導入・運用する際の実務手順
自社にCASBを導入し、業務の利便性を損なわずにクラウドセキュリティを強化するための実践的なステップをご紹介します。
1.1. 社内のクラウド利用状況とシャドーITの洗い出し:現状把握(可視化)。
まずはCASBの可視化機能を利用し、現在社内でどのようなクラウドサービスが利用されているかログを収集・分析します。ここで予想以上のシャドーITが発見されることが多々あります。
2.2. 許可するサービス(サンクションIT)の選定とポリシー設定:ルールの策定。
可視化したデータをもとに、「会社として利用を許可するクラウドサービス(サンクションIT)」を決定し、それ以外へのアクセスをブロック、または読み取り専用(アップロード禁止)にするポリシーを設計します。
3.3. 従業員への周知とテスト運用(PoC):段階的な適用と運用。
いきなり厳しい制限をかけると業務が停止する恐れがあるため、事前に従業員へ「新たなクラウド利用ルール」を周知し、テスト運用期間を設けてから本稼働へ移行します。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. CASBは中小企業でも導入したほうが良いですか?
A1. クラウドサービスの利用頻度が高い企業であれば、企業規模を問わず導入を推奨します。
中小企業でもMicrosoft 365やGoogle Workspaceを業務インフラとしている場合、設定ミスやアカウントの乗っ取りが致命的な情報漏洩に繋がります。
クラウド型のCASB製品であれば、初期費用を抑えて手軽に導入できるものも多く存在します。
Q2. 会社のPCを使っていれば、CASBがなくても安全ではないですか?
A2. PCが会社支給であっても、クラウド側の設定が甘ければ危険です。
例えば、会社支給のPCから許可されたクラウドストレージへ機密ファイルをアップロードしたとしても、そのファイルの共有範囲が「リンクを知っている全員」に設定されていれば、誰でも外部からアクセスできてしまいます。
CASBはこのような「危険な共有設定」も自動検知してブロック・修正することが可能です。
まとめ:クラウドの利便性を損なわず、安全に活用するために
CASBは、クラウドサービスの利用が不可欠となった現代企業において、シャドーITを根絶し、機密データを守るための「クラウド専門のセキュリティ関所」です。
- 企業とクラウドの間に設置し、一元的なセキュリティ監視を行う仕組み。
- 「可視化」「コンプライアンス」「データ保護」「脅威防御」の4つの基本機能を持つ。
- シャドーITの発見や、複数クラウド間のセキュリティポリシー統一に絶大な効果を発揮。
クラウドの利便性をフルに活かしつつ、セキュリティリスクを最小限に抑えるために、ぜひ自社のインフラ環境にCASBを取り入れることを検討してみてください。
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